思い描く、幸せな暮らし
古民家、というと言い過ぎかもしれないけど、とりあえず和風な風情のある、畳の香る、そして縁側だけは欠かせない。そんな一軒家を買って、私はお気に入りの庭の見える縁側で読書をしたり、好き勝手文章を書いたりするのだ。
まだ幼いこどもたちは広い畳の上でごろりと手足を伸ばし、暑さの中にも涼しい風が吹き抜ける居心地のいい空間で、小さな寝息を立ててお昼寝をする。
庭に干した洗濯物の清潔な香り、畳の落ち着いた香り、溢れんばかりの草木の香り、熱いコーヒーの香り。
様々な香りが入り交じって、それでも一つ一つが私を癒してくれる。
さわさわと風に揺れてささめきあう葉たちの音がする。
こどもたちが起きたらおやつは何にしようか。
くるみの入ったパウンドケーキでも準備してみようか。
くろさんは定時で帰ってくるかな。
久しぶりに唐揚げでも作ってみようか、それともハンバーグがいいかな。
そんなことを頭の片隅で思案しながら、冷めてきたコーヒーを一口。
庭には小さな小さな菜園と、くろさんに頼んで植えてもらったキンモクセイや季節ごとに彩る植物たち。
ふと思い立ち、居間の戸棚を探りに行く。
お気に入りのカメラを手にとって、愛しい我が子たちを離れた場所からパシャリ。
ふくふくとした手足がクリームパンのようで美味しそうだなあなんて思いながら。
印刷したら密かに集めて整理している家族のアルバム帳に追加しよう。
そして実家に帰省したときに晴れてじじとばばになった父母に見せよう。
そんな細やかな楽しみを考えては自然と笑みが溢れる、ゆったりとした昼下がり。
私の大好きな、幸せな時間。
なんて。
幸せって何だろう、理想の暮らしって何だろうって考えてたらこうなった。
贅沢だろうか。
生活自体は質素なもので十分なんだけれど。
安らげる場所が家のどこかにあることに憧れる。
私は昔から縁側への憧れが強かったから、家を買うなら是非とも縁側のある家がいいなあ。
本とパソコンとカメラと手帳。
あとは縁側、時々タバコ。
あとは大切な家族の笑顔があれば、毎日幸せだろうなあ。