好きなことを仕事にする勇気
自分が決めて歩いてきた人生に今更文句はつけられないけれど、人の人生を見て、羨ましいと思うことはある。
例えば高校の部活の友人。
美術部に所属はしていたけど、私は全くやる気がない部員で、言われたことを最低限やってればいいかなあくらいの気持ちで毎日部室にいた。
しかしその友人はヘッドホンで音楽を流して周りとの境界線をつくり、黙々とひたすら絵を描いていた。
それはもう真剣に。
時折話しかけては下らない話題で邪魔をしていた私は魔性のクズである。
その友人、高校卒業後はイラストレーターや漫画家を目指すような専門学校へ進学し、すぐさま漫画家になった。
余談であるが、早いうちに結婚もし、現在は二児の父でもある。
今でも極たまに連絡を取ったりするが、仕事は順調、家族仲もすこぶる良好のようで、私なんかから見たら幸せな人生の極みに見える。
何より昔からなりたかった漫画家に、本当になってしまったことがすごいと思う。
作品を描き、賞を取り、編集者に認められ、プロになる。
元々才能はあるような雰囲気だったが、一番はその上をいく努力の賜物だろうと感じる。
好きなことを仕事にした身近な例がいると感銘を受けるものだ。
私は作家になりたかった。
けれど、なれる保証もない職業を目指す強い志しもなく、その夢は儚く散り終えた。
そして結局、安定した職を選んでしまった。
今なら思う。
努力して、夢を追うべきだったのではなかろうかと。
好きなことを目指す、薄給でもいいからすがり付く。
そんな根気があれば、人生はもっと輝かしいものになっていたかもしれない。
とは言っても、私だって夢を諦めたわけではない。
今から出来ること、拓ける道もきっとあると信じてる。
好きなことを仕事に。
これ程ロマンに満ち溢れたものはあるだろうか。
だから私は、漫画家になった友人を羨ましがると同時に、とても尊敬しているのだった。